生まれ変わるエンジンたち

スウェーデンのフレンにある工場で、中古の大型トラック用エンジンに新しい命が吹き込まれる。 損耗したパーツを新品同様にする再生整備(リマニ)は、新品製造に比べて環境への影響が小さいプロセスだ。

フレン工場の内部

エンジン・アタッチメントをボルボ・トラック用のD13エンジンに取り付ける、オペレーターのエドヴァルト・フィンストルプ。 フレン工場はボルボ・グループ全体でも最大の再生整備施設であり、ボルボ建設機械、ボルボ・バス、ボルボ・ペンタなど他事業のエンジン再生も請け負っている。

ラルシュ・フェルンスコク

フレン工場のプラントマネージャー、ラルシュ・フェルンスコク。

背の低い建物が並ぶフレン(スウェーデン)のボルボ・パーツ工場。その屋外では、ブルーシートを被った多数のエンジンが列をなし、暖かい屋内へ招き入れられる順番を待っている。 ヨーロッパとアジアのボルボ・トラック・ディーラーから送り返されてきたエンジンたちだ。 ボルボ・トラックが提供しているエクスチェンジ・パーツ40種類のうち、エンジンは再生整備作業に最も長い時間を要する。

「工場に運び込んでから、テストと塗装が完了するまで、57時間ほどかかりますね」と、フレン工場のプラントマネージャーであるラルシュ・フェルンスコクは言う。 

再生プロセスは、まず分解作業から始まる。 すべてをバラバラにして、使えない部分はリサイクルへ、整備して使える部分はクリーニングとブラスト洗浄へ。 水分、残留油分、塗装を取り除いてからマシニング工程に進む。

バルブ・ハウジング

D12エンジンの油圧制御を行うバルブ・ハウジングのチェックには、三次元測定機が使われる。

クランクシャフトを磨く

クランクシャフトのオイルポートを磨く、オペレーターのクリスティーネ・ソーデルント。 エンジンを組み立て直す前にはパーツごとに異なる作業が多数行われるが、これもその一つ

マシニングでは、シリンダーヘッド、クランクシャフト、エンジンブロックなどのパーツに対して、いろいろな側面の高精度サンディング加工、ミリング加工を慎重に行う。 

「どのエンジンも何か理由があってここへ来たのです。 どう使われていたかわかりませんから、とにかく、どの面にも乱れがない状態にすることが大事です」と、シリンダーヘッド再生担当のヨルゲン・カールソンは言う。 

彼自身を含め、ここにはエンジンに関する知識がきわめて豊富な人材が揃っている。 トップクラスの技能がないと再生整備はできないからだ。 フレンの工場で再生整備されるボルボ・トラック用エンジンのバリエーションは150~200種類もある。

「大半は8~9年前に製造されたエンジンですが、 ときには1970年代のものが持ち込まれることさえありますよ。 そういうエンジンにも、しっかり対応するようにしています」(カールソン)

リマニ工程を流れていく過程で、一つ一つのエンジン・コンポーネントが数回の検査にかけられる。 検査基準は新品と同じだ。 

「再生整備品といえども、エンジンの保証内容は新品のボルボ純正パーツと同じです。品質、耐久性、性能のいずれも劣っていません」(フェルンスコク)

クランクシャフト

サンディング工程に入る前のD12エンジン用クランクシャフト。 再生整備では、不揃いな部分をすべて取り除いて表面をスムーズに整えることが重要

また、あらゆる部分が再生もしくは新品に交換されるだけでなく、各モデルの最新仕様に合わせた更新も行われる。 本当にあらゆる面で、フレンから送り出されるエンジンは新品に劣らない品質を備えているのだ。 

「燃料アクセスからソフトウェアまで、すべての面が最適化された状態にしています。 再生整備品のエンジンを購入するお客様は、より良いものを大幅に安い価格で入手でき、しかも環境保護に貢献しているわけです」(フェルンスコク)

エンジン再生整備のエネルギー消費量は、新品トラック・エンジンの製造より85%も少ない。 また、同じく原料の消費量も80%少なくて済む。 これほど大きな環境面のメリットがあれば、今後エクスチェンジ・パーツの需要は確実に伸びるというのがフェルンスコクの見方だ。

シリンダーヘッドの検査

シリンダーヘッドのひび割れ検査には磁性粉末とランプを使う。 ひび割れがあると、その箇所がはっきりと緑色に浮き出て見える

「天然資源に限りがあること、原料価格が上昇していることはご存じのとおりです。 それに、お客様が製品に持続可能性やリユース性を求める意識も高まっていますからね」(フェルンスコク) 

トランスミッションやエンジンのような基幹部分の再生整備に関しては、設計段階からそのことを考慮しているかどうかが重要な意味を持つ。 そこで、フレン工場は製品開発部門と密に連絡を取り合い、開発プロジェクトの早い段階からリマニ現場の意見を反映できるようにしている。 

「再生を前提とした製品開発は、メーカー自身にも、お客様や環境にも非常に大きな価値がある考え方なのです」と、フェルンスコクは語った。

 

再生を前提とした製品開発は、メーカー自身にも、お客様や環境にも非常に大きな価値がある考え方なのです

ラルシュ・フェルンスコク

フレン工場プラントマネージャー

フレン工場

クランクシャフト

ボルボ・トラックは、フィルター、ポンプ、トランスミッション、エンジンなど合計40種類のエクスチェンジ・パーツを提供している。

40 ― ボルボ・トラックが提供しているボルボ・エクスチェンジ・パーツの種類。フィルター、ポンプ、トランスミッション、エンジンなど多岐にわたる

85% ― トラック・エンジンの再生整備を新品エンジンの製造と比較した場合の省エネルギー効果

80% ― トラック・エンジンの再生整備を新品エンジンの製造と比較した場合の原料節約効果

90% ― 古いトラック・エンジンのリサイクル・レベル

57 ― トラック・エンジン1基の再生整備にかかる平均的な時間数

150~200 ― 再生整備されるボルボ・トラック用エンジンのバリエーション数

210 ― 従業員数

27,000 m2 ― 工場敷地全体の面積

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