ハイブリッド革命 ― 研究開発を重ねた年月

ボルボ・トラックがハイブリッド・トラックを初めて世に出したのは2011年6月のこと。現在、すでに50台を超えるボルボVEハイブリッドが稼働中だ。長年にわたる研究開発が実を結び、私たちは、確かな将来性を備えたハイブリッド技術の提供実績を重ねている。

ボルボ・トラックのハイブリッド・エンジン。

ボルボ・グループがハイブリッド・ドライブラインの研究に着手した時期は1985年まで遡る。ただし、実用化に向けて本格的に動き出したのは2005年だ。

ボルボFEハイブリッドの意義を十分に理解するには、この研究開発プロジェクトにどれだけの努力が注がれてきたかを知る必要がある。一般的な認識とは異なるが、エンジン動力に電気的な仕組みを導入する考え方は新しいものではない。ボルボ・グループでは、1985年からハイブリッド・ドライブラインの研究に着手している。ただ、当時のプロジェクトが試作車や実験車両の域を超えて発展することはなかった。

アンデシュ・クルーン

アンデシュ・クルーン(ボルボ・トラックのエネルギー効率・環境担当副社長)

「排出ガス規制を十分にクリアできない場合に備えた、保険として行われているプロジェクトでした」と、ボルボ・トラックでエネルギー効率・環境担当のバイスプレジデントを務めるアンデシュ・クルーンは当時を振り返る。十数年間にわたってハイブリッド・プロジェクトに深く関わったメンバーのひとりだ。「市場性や採算性はまったく考えておらず、製品として商業的に通用するものを作ろうという意識はありませんでしたね」 

そんな状況が大きく変わったのは2001年のことだ。クルーンは次世代の燃料を研究する仕事を任され、衝撃的な見通しを知る。

「これまで使っているオイルの時代がいずれ終わることは明らかですが、それが間近に迫っているというのです。化石燃料の代替となるエネルギーが必要で、そのときに備えて直ちに動き出す必要がある。私たちはすぐに気がつきました」 

クルーンのチームは、動力への変換効率が高いことから最も現実的なエネルギー源は電気であるとの結論に至り、2002年から電気と燃焼装置のさまざまな組み合わせの研究を始めた。これがパラレルハイブリッドの開発に繋がっていく。ボルボ・グループの開発費に加え、スウェーデン政府と米国国防省からも資金協力を得て、2005年末にはパラレル方式ハイブリッドを搭載した試作車を披露できる段階までこぎ着けた。 

必要な技術はすでに持っています。現在は、その完成度を高めることに取り組んでいます。

マッツ・アラキューラ(ボルボ・トラック、グローバル先進エンジニアリング部門の技術者)

ここで、開発チームに大きな転機が訪れる。社内で試作車を見た当時のボルボ・グループCEO、レイフ・ヨハンソンが、「ボルボ・グループは3年以内にハイブリッドのドライブラインを製品化する」と正式に発表したのだ。

ミゲル・ハルグレン

ミゲル・ハルグレン(ボルボ・トラックの製品要求部門マネージャー)

「まだ作業に着手して3年、正式な組織ですらなかったので、大あわてで人材を集め、態勢を整えました。幸い、製品化可能なドライブラインを2年半で作り上げることができました」(クルーン)

この成果を搭載したものが、ボルボ・トラックが2009年に発表したボルボFEハイブリッドである。2011年6月には第1号の車両が納車され、現在では50台を超えるハイブリッド車が稼働している。 

ボルボ・トラックの製品要求部門のマネージャー、ミゲル・ハルグレンは言う。「商用のハイブリッド・トラックとしては最も大型のクラスです。ボルボ・トラックより先に26トンクラスのハイブリッドトラックを生産したメーカーは世界中どこにもありません」

ボルボFEハイブリッドは、始動時は電動モーターだけを使って走行し、時速20kmを超える加速状態ではディーゼル・エンジンを併用する。自動ギアボックスで双方の最適なエネルギーバランスを調節することで、作動効率の低下を防ぐ。ブレーキ時に発生するエネルギーを回収しバッテリーを充電することにより、エネルギーを無駄にしない。

低速時には燃料を消費せず、ブレーキ時にエネルギー回収する、ボルボFEハイブリッドは発進・停止を繰り返す運転に最も適している。燃費節減効果が最も高いのはごみ収集車などで、その効果は最大20%にも上る。電動ごみ圧縮機と組み合わせれば車両全体として30%の低減も可能だ。市街地配送トラックなども同様で、節減効果は最大15%になる。

ボルボ・トラックより先に26トン・クラスのハイブリッド・トラックを生産したメーカーは世界中どこにもありません。

ミゲル・ハルグレン(ボルボ・トラックの製品要求部門マネージャー)

これまでのところ、ボルボFEハイブリッドに対する顧客の反応は驚くほどに良好だ。評判どおりの燃費節減および騒音抑制効果に加え、稼働率と生産性も上がるためである。

「他メーカーとは大きく異なり、ボルボFEハイブリッドのシステムは最適化されています。開発当初からシステム全体を統合し、あらゆるコンポーネントを最適化しているため、全体がうまく連動します。それが、優れた品質とパフォーマンスの理由です」(ハルグレン)

マッツ・アラキューラ

マッツ・アラキューラ(ボルボ・トラック、グローバル先進エンジニアリング部門の技術者)

ボルボFEハイブリッドのパフォーマンスの高さには、開発チームさえも驚いている。

ボルボ・トラックのグローバル・先進エンジニアリング部門で技術者として働く、マッツ・アラキューラは言う。「車両として非常に信頼性の高い製品に仕上がりました。ロンドンで稼働しているハイブリッド・バスは、同型のノンハイブリッド車より長い走行時間を達成しています。これは驚くべきことで、私たちが達成した品質の高さを如実に示す証拠といえます」 

「エンジニアリングは競技スポーツのようなもので、最初に成し遂げた者が脚光を浴びる世界です。2~3年もすると、多かれ少なかれ、似たような製品が市場に出回るようになってしまいます」(クルーン)

では、今後の展開はどうなるのか。ボルボFEハイブリッドは到達点なのか、それとも出発点に過ぎないのか。「ハイブリッド化は、燃費を向上させるという意味では有意義なワンステップです。しかし、燃料を全く使わずに済むのではないので、問題は解決していません。次のステップはディーゼルから代替エネルギーへの移行ですね。メインのエネルギーを電気に置き換えるということです」(アラキューラ)

当面は、バッテリー容量を増やしてハイブリッド性能を向上させ、より多くの用途や車種にハイブリッドを採用できるようにすることだ。しかし、ブレーキ時からのエネルギー回収には限界がある。完全な電気モードに移行するにはプラグイン・ソリューションの導入が必要になるだろう。実現に向けた将来的な優先事項は、駐車中の充電をどこでも可能にするなど、車両の運行サイクルを変更せずに電力系統に接続する方法を探ることだ。スピーディかつ便利な接続方法が見つかれば、決まった停留所に止まるバスにおいては最大の効果が見込める。さらには、市街地輸送のトラックにも同様の可能性が見込めるだろう。

必要な技術はすでに持っています。現在は、その完成度を高めることに取り組んでいます。

マッツ・アラキューラ(ボルボ・トラック、グローバル先進エンジニアリング部門の技術者)

「たとえば、1日10回、毎回5分から10分停車するトラックの場合、各所に強力な充電スポットがあれば、たいていの場合はそれで1日分のエネルギーをまかなえます。1日のほとんどの時間を電気モードで走ることができるようになり、環境面でも経済面でもメリットが生まれるでしょう。私たちはこれに必要な技術を既に持っており、現在はその完成度を高めることに取り組んでいます」(アラキューラ)

頼もしい話だが、制約はある。停車の頻度が高いという条件に依存しているため、長距離輸送にはまったく応用できない。だが、走行中にバッテリーを充電することができるとすればどうだろうか。走行中の車両を継続的に電力系統に接続する電池式道路走行車両という考え方である。夢物語のようにも聞こえるが、実現に向けて検討されているアイデアの1つだ。クルーンによれば、米国、アジア、欧州では試験用トラックが作られているという。 

アラキューラは次のように締めくくる。「カギとなるのは充電です。安価な電気エネルギーを安全・確実に、便利に供給することができれば、状況を大きく変えることができます。これを解決すれば制約はなくなります」
 

ボルボのハイブリッド・ドライブライン。

ボルボのハイブリッド・バスは、ロンドン市内の運行において、同型のノンハイブリッド車を上回る非常に確実な稼働実績を達成している。

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